中学時代からの友人に、いわゆる資産家の家庭で育った人がいる。
今でもよく会うが、彼の考え方は昔から一貫している。
一言で言えば、「お金の使い方が静か」だ。
彼はお金に困っている様子を見せたことがない。
だからといって、浪費をしているわけでもない。
むしろその逆で、必要のないものにはほとんどお金を使わない。
家電は壊れるまで使う。
服も長く着る。
襟元がほつれていても、気にせず着続ける。
見た目だけでは、いわゆる「お金を持っている人」には見えない。
ただし、使うと決めたところにはしっかり使う。
彼は旅行が好きで、その体験を良いものにするためには、
宿や食事、現地での活動にお金を使うことを惜しまない。
この「使うところ」と「使わないところ」の線引きが、
とてもはっきりしていた。
また、彼と食事に行けば、必ず割り勘だった。
特別な事情がない限り、
どちらかが多く払うことはない。
当時はどこか事務的にも感じたが、
今思えば、それは自然な距離感だったのだと思う。
お金によって関係が歪むことを、
彼は無意識のうちに避けていたのかもしれない。
彼とお金の話をした時に、
印象に残っている言葉がある。
「お金は使えばなくなる。それだけの話だよ」
当たり前のことのようでいて、
この感覚を本当に理解している人は少ないのではないかと思う。
お金を使えば、何かを得る。
その多くは「満足」だ。
だとすれば、お金とは
満足を得るための交換券のようなものだと言える。
そして、その交換の仕方が上手い人が、
結果としてお金を残せる人なのだろう。
彼を見ていると、
お金があるかどうかよりも、
どう使うかの方がはるかに重要なのだと感じる。
人は、お金があればあるほど欲しくなる。
では、どれだけあれば満足できるのか。
1億か、2億か、それとも10億か。
おそらく、そのどれでも「何か違う」と感じるのではないかと思う。
だからこそ、自分にとっての満足を考える必要がある。
何に使えば満たされるのか。
どこに使わなくてもいいのか。
彼の姿を見ていると、
お金の問題とは、量の問題ではなく、
使い方の問題なのだと感じる。
そしてその使い方は、
その人が何に価値を感じているかによって決まる。
お金の使い方は、そのまま生き方に現れる。
そんな当たり前のことを、
私は彼から教わったのだと思う。

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